目次 — 知りたいところから読む

入力を変えて確かめる

実験パネルを開き、実行を押すとPythonを読み込みます。停止と初期値へのリセットができます。結果はこの端末内で計算します。Pythonのインストールは不要です。

下にあるローカル実行の手順は、配布ソースを再現するための任意の手順です。ブラウザ実験には不要です。

実験パネルを別タブで開く

再現用ソースをダウンロード

二つのブラウザ実験

上のパネルは炭素・水の計算です。炭素取り込み、終日の放出、明期の長さを変えて、明期・暗期・一日の炭素変化を比べられます。明期は0時から始まります。下の感度曲線では水蒸気の総コンダクタンスと全圧を固定し、葉内−空気の水蒸気圧差を変えています。点が指定条件の移動量です。この横軸は時間ではありません。既定値は9.2 gCと0.1296 kg/(m² leaf・h)を再現します。

光の時間・分布・帯域は別の実験です。下のパネルを開くと、A/Bの等DLI、均一Uと不均一V、スペクトルS1/S2を再現できます。

光の実験を開く

光のパネルは固定24時間を計算し、深夜をまたぐ点灯にも対応します。上図の棒は4区画のPPFDで、棒幅は面積ではありません。不均一Vは名目PPFDの0.5・1・1・1.5倍です。面積比は1:1:1:1または1:1:1:3を指定でき、平均は面積加重です。下図は名目PPFDを400–500、500–600、600–700 nmの重複しない帯域へ分けた値です。区画ごとのスペクトル測定や光学シミュレーションではありません。区画DLI・面積比・点灯時系列は数値表でも確認できます。

名目DLIと帯域内訳は名目入力に対する計算、区画DLIと面積平均は空間分布に対する計算です。面積比を変えても名目DLIは変わりません。PPFDゼロでは正の光量の時間は0となり、最小/平均と帯域割合は未定義(—)になります。

両実験とも合成条件の帳簿で、収穫量・気孔応答・消費電力・照明器具の性能を予測しません。炭素取り込みをPPFDから推定する結合モデルでもありません。入力範囲は教材の範囲で、栽培推奨値ではありません。Pythonのインストールは不要で、以下のローカル実行手順は任意です。炭素・水の実行コードと解析コード、光の実行コードと解析コードは、それぞれ同じフォルダに保存して初期値を再現できます。

CEAの植物と環境 — 光合成・呼吸・蒸散を制御へつなぐ

設備の設定値と、植物の応答の間にあるもの

照明を明るくした記録だけでは、植物が取り込んだ炭素の増加は分からない。湿度を下げた記録だけでも、蒸散がどれだけ増えたかは分からない。葉へ届く光や水蒸気圧差に加え、植物の状態と物質が移動する経路が関わるからである。

CEA入門に続き、本記事では光合成を行う植物を、炭素を取り込み、水を移動させ、環境へ応答する系として整理する。葉の交換、植物全体の収支、栽培室の収支を分けると、既存Labの「植物による吸収」「蒸散」という項の意味が見えてくる。

二つの説明用計算では、1日の炭素増加は 9.2 gC、同じ水蒸気圧差でも総コンダクタンスを半分にすると水蒸気移動量は 0.1296から0.0648 kg/(m²・h) になる。すべて合成条件の結果であり、特定作物の同定値や栽培処方ではない。

光合成と呼吸を、同じ炭素収支へ置く

光合成は光エネルギーを使ってCO₂由来の炭素を有機物へ取り込む過程である。呼吸は有機物を使って生命活動に必要なエネルギーを得る過程で、明期にも暗期にも起きる。光合成産物は葉だけに残るわけではなく、根や発達中の器官へも配分される。Oregon State Universityの植物生育解説は、この光合成・呼吸・物質配分の関係を説明している。

ここで数えたいのは、ある植物群に含まれる炭素量の変化である。説明用の閉じた帳簿として、炭素の取り込みを P_C、放出を R_C と置く。

\Delta C = \int (P_C-R_C)\,dt

P_C と R_C は gC/h、時間はh、結果はgCである。gCは炭素元素の質量であり、CO₂の質量や生体重ではない。この簡略帳簿では収穫、落葉、根からの炭素流出などを省く。光呼吸も独立には計算せず、実測値を取り込むときは何が取り込み・放出へ含まれるかを定義し直す。

特に、測定器が出す正味同化速度を取り込み側へ置いて、同じ葉の呼吸を再度引かない。LI-CORのガス交換理論では正味同化と呼吸を区別している。葉面積当たりの値を植物群へ拡張する際にも、対象面積と葉ごとの差、測定に含まれない根・茎の交換が問題になる。

16時間の明期と8時間の暗期を検算する

植物群全体の P_C を明期0.8 gC/h、暗期0、R_C を終日0.15 gC/hに固定する。16時間は計算上の条件で、推奨日長ではない。

期間 取り込み 放出 炭素量の変化
明期16 h 12.8 gC 2.4 gC +10.4 gC
暗期8 h 0 gC 1.2 gC −1.2 gC
合計24 h 12.8 gC 3.6 gC +9.2 gC

放出速度だけを0.25 gC/hへ変えると、1日の変化は6.8 gCとなる。差の2.4 gCは 24\times(0.25-0.15) と手計算でも確かめられる。この比較では温度応答をモデル化していないため、「何°C上がった結果」とは解釈できない。

9.2 gCをそのまま収穫重量へ置き換えることもできない。乾物への換算には炭素比率、生体重には含水率、可販収量には器官配分や品質・収穫基準が追加で必要になる。現在の帳簿が与えるのは、指定した期間と境界における炭素量の変化までである。

気孔はCO₂と水の移動に関わる

葉と空気の間では、光合成に使うCO₂の流入と、水蒸気の流出が起きる。気孔は両方の経路に関わるため、水の損失を抑える応答がCO₂の取り込みにも影響しうる。FAOは蒸散を葉内部での気化と大気への移動として説明し、気孔開度や水供給をその条件に挙げている。FAO:蒸発散の基礎

図1 · ボタンで表示を切り替え
植物の炭素と水の交換。光、葉の交換、根からの水供給、成長への配分を別の経路として示す。

概念図。矢印の太さは流量を表さない。CO₂の正味交換は条件によって向きが変わり、光合成と呼吸は明期に同時に起こりうる。

蒸散を駆動する水蒸気圧差には葉温が関わる。葉内の空気を葉温 T_l で飽和していると近似すれば、葉内から周囲空気への差は次になる。

D_l=e_s(T_l)-e_a

e_s は飽和水蒸気圧、e_a は周囲空気の水蒸気圧である。空気温度 T_a とRHから計算する空気側のVPDは e_s(T_a)-e_a なので、葉温と気温が異なると一致しない。VPD・DLI Labの気温による指標を、葉温の実測の代わりにはしない。

同じVPDから蒸散量が一意に決まらない理由

説明用に、葉内部から周囲空気までの水蒸気移動を次の近似で表す。

E\approx g_{tw}\frac{D_l}{p}

g_{tw} は気孔と葉面境界層の作用を含めた水蒸気の総コンダクタンス、単位は mol/(m²・s)。p は全圧、D_l と同じkPaで与える。E は mol/(m²・s)の水蒸気流束となる。面積は一貫した葉面積基準であり、床面積ではない。気孔だけのコンダクタンスを、そのまま総コンダクタンスとして代入しない。

これは希薄な水蒸気のモル分率差を D_l/p とする定常近似で、測定器の完全な補正式ではない。境界層と気孔の抵抗を区別する考え方はLI-CORの理論解説に沿う。FAOも、植生側と空気側の移動抵抗、水分状態を別に扱っている。FAO:抵抗と蒸発散

全圧100 kPa、水のモル質量を説明用に0.018 kg/molとして、次の合成条件を比べる。

条件 総コンダクタンス 葉内−空気の差 水蒸気移動量
A:基準 0.20 mol/(m²・s) 1 kPa 0.1296 kg/(m²・h)
B:通りやすさを半分 0.10 mol/(m²・s) 1 kPa 0.0648 kg/(m²・h)
C:Bから圧力差を倍に 0.10 mol/(m²・s) 2 kPa 0.1296 kg/(m²・h)

AとBでは圧力差が同じでも流量が違う。AとCでは流量が同じでも状態が違う。VPDまたは流量一つから、気孔の状態まで逆算することはできない。

この比較では g_{tw} を外から指定しており、湿度を変えたときの気孔応答は予測していない。実植物では水分状態などが抵抗を変えるため、単純に「乾燥させれば比例して蒸散が増える」とは言えない。g_{tw}=0 の計算結果は0だが、これはモデル内の全経路を遮断した極限であり、現実の気孔閉鎖で水損失が完全に消えるという意味ではない。

根からの供給と、栽培室への放出をつなぐ

根圏に水が存在することと、植物へ十分な速度で水が供給されることは同じではない。根の状態や水分条件も確認する必要がある。さらに、養分の吸収を「吸水量×一定濃度」で常に決められるわけではない。EC、pH、溶存酸素、水温を扱う次の根圏編では、これらを別の測定量として整理する。

観測の境界にも注意する。タンク水位の低下には、植物への吸水に加え、蒸発、排水、漏れ、補給操作が混ざりうる。植物体に水が蓄積すれば、その時間帯の吸水量と蒸散量も一致しない。FAOが区別する蒸発と蒸散を踏まえ、計量対象を先に決める。FAO:蒸発散の基礎

湿度収支Labに与えた蒸散量と、CO₂収支Labに与えた吸収・呼吸量は合成入力だった。本記事もそれらを実植物の応答モデルへ置き換えるものではない。置き換えるには、環境と植物交換の同時測定、対象面積、時刻同期、別条件での検証が必要になる。

任意:ローカルで仮定を一つずつ変える

計算コードと期待結果JSONを保存する。Python 3.10以降の標準ライブラリだけで動作する。

配布物の実行条件はREADME、ファイルのサイズとSHA-256はmanifestに記録している。

python3 experiment.py
python3 experiment.py --verify expected.json
python3 experiment.py --self-test

最初のコマンドはJSONを表示する。二つ目は既定条件の全数値を期待値と比較し、不一致・欠落・NaNを失敗として終了する。三つ目は暗期の損失、期間分割、単位換算、ゼロ流束、不正入力などを検査する。

核となる計算は短い。

# Carbon: gC/h multiplied by hours, not a fresh-mass prediction.
delta_c = 0.8 * 16 - 0.15 * 24
# Water: mol/(m2 s) -> kg/(m2 h), pressure units cancel.
water = 0.20 * (1.0 / 100.0) * 0.018 * 3600
print(f"{delta_c:.1f} gC, {water:.4f} kg/(m2 h)")

変更するなら、まずコード末尾の examples() が呼ぶ放出速度、次に水蒸気の総コンダクタンスを一つずつ変える。期待結果は元の条件の基準なので、変更後に不一致となること自体は正常である。明期にしか呼吸を引かない式へ変更すると、本例では1.2 gCを過大評価する。水の計算でkPaとPaを混在させると1000倍の誤差が生じる。

次の環境操作を評価するための記録

以下は実験設計の提案であり、特定作物の測定標準ではない。

比較したいこと そろえる条件・追加で見る量
点灯変更と炭素交換 葉へ届くPPFD、CO₂、葉温、時間帯、葉面積、正味/総量の定義
除湿変更と水交換 葉温と周囲の温湿度、気流、給排水・重量、根圏条件
環境操作と生育 品種、生育段階、処理期間、乾物・生体重の定義、比較区と反復
異常と回復 変化前・中・後の連続記録、センサー状態、操作履歴

葉温上昇や生育停滞が一つ見つかっても、その原因や病害を一意に診断したことにはならない。条件の継続時間と回復、測定誤差、根圏や気流など別の説明を照合する。

次は光の量・時間・分布へ進む。既存のVPD・DLI計算を土台に、同じDLIでも照射の強さと時間が異なる条件をどう比較するかを整理する。

光環境の設計では、同じDLIでも異なる点灯スケジュール・棚内分布・波長の内訳を比較する。

CEAの光環境 — 同じDLIでも時間・分布・光質が違う

DLIが同じでも、光環境の記録は同じにならない

PPFD 200 µmol/(m²・s)を16時間与える場合と、400を8時間与える場合は、どちらもDLIが 11.52 mol/(m²・day) になる。しかしピークの光強度と暗期の長さは異なる。さらに、平均PPFDが200の棚でも、すべての場所が200とは限らない。

植物と環境の基礎では、光の設定から炭素の取り込みや生育が一意に決まらないことを整理した。本記事はその光側の条件を、時間、位置、波長へ分ける。数値例はすべて説明用の合成データで、実施設の配光測定や作物別の推奨設定ではない。

PPFD・DLI・照度・電力を分ける

量 このページでの意味 それだけでは分からないこと
PPFD:µmol/(m²・s) 測定面へ入射する400–700 nmの光子束密度 波長ごとの内訳、葉による吸収量
DLI:mol/(m²・day) 同じ面で一日積算したPPFD 点灯・消灯の時刻、途中のピーク
照度:lx 人の明るさの感度で重み付けした量 光源に依存しないPPFD換算
電力:W、電力量:kWh 設備へ入る電力とその時間積分 棚や葉へ届いた光子の量

照度とPPFDの換算係数は光源によって異なる。

DLIは一瞬の光量ではなく一日の積算量である。PurdueのDLI測定資料は、植物の高さで測定し、生育に応じてセンサー高さを調整することを勧めている。

PPFDの400–700 nmという測定帯域と、植物の全応答を混同しない。範囲外の光を「植物に作用しない光」と判断する定義ではない。400–750 nmを測るePAR機器もあるので、比較時は帯域を明記する。ApogeeのePARセンサー説明

時間:同じ積算を別のスケジュールで与える

一日の各区間でPPFDが一定なら、次で積算する。

DLI=10^{-6}\sum_i PPFD_i\,\Delta t_i

\Delta t_i は秒である。既存のVPD・DLI Labは不等間隔と欠測の検証を扱う。本記事の計算例は固定24時間の人工照明スケジュールに限定する。

合成条件 点灯区間 点灯中PPFD 点灯時間 暗期合計 DLI
A 06:00–22:00 200 16 h 8 h 11.52
B 08:00–16:00 400 8 h 16 h 11.52
図2 · ボタンで表示を切り替え
同じDLIを持つ二つの合成点灯スケジュールと、同じ平均PPFDを持つ二つの棚分布。

上段の面積は同じ積算量を表す。下段は等面積4区画の合成値であり、実測配光図ではない。

積算値が同じことは、光合成や生育まで同じになる証明ではない。Elkinsとvan Ierselのレタスを対象とした原著論文の抄録では、同じDLIをより低いPPFD・長い光周期で与えた条件で、光化学系IIの一日積算電子伝達量が増えた。ここで報告された指標を、そのまま全作物の収量や推奨日長へ置き換えることはできない。本記事のA・Bはその実験データの再現でもない。

時間の記録にはDLIとともに開始・終了、調光履歴、ピーク、暗期を残す。点灯時間の合計が同じでも、途中に暗期を挟む条件と連続照射は区別する。本コードが返す light_hours は正のPPFDを持つ時間の合計であり、生物学的な光周期を自動判定した値ではない。

空間:平均が同じ棚の、暗い場所を見つける

等面積4区画で、点灯中のPPFDが一日を通して次のように固定されると仮定する。

分布 区画ごとのPPFD 平均 最小/平均 16時間後の区画DLI
U:均一 200, 200, 200, 200 200 1.00 11.52, 11.52, 11.52, 11.52
V:ばらつきあり 100, 200, 200, 300 200 0.50 5.76, 11.52, 11.52, 17.28

Vの平均DLIは11.52だが、最も暗い区画はその半分である。平均だけではこの差が消える。ここでは最小値/平均値を分布の記述指標として使い、合格基準は定めない。

各区画が代表する面積 a_j が違うとき、平均は面積で重み付けする。

\overline{q}=\frac{\sum_j a_jq_j}{\sum_j a_j}

たとえば面積比1:3の二区画が100と300なら、面積平均は250であり単純平均の200ではない。実際の点測定を区画代表値として扱うには、測定格子と補間・代表面積の根拠を決める必要がある。4点測れば棚全体が分かるという例ではない。

測定では同じ高さ・向き・位置を再現する。棚端、照明直下、支柱による影などを平均で隠さず、植物が育った後も確認する。空の棚の水平面で測ったPPFDと、傾いた葉が受けて吸収する光は別の量である。温室でセンサーを順に移す場合は、測定中の自然光変化を固定参照点で区別する。

光質:同じPPFDへ異なる波長の内訳を入れられる

PPFDは帯域内の光子をまとめた量なので、波長の内訳は残らない。以下は説明用の帯域別光子束密度である。いずれも合計は200だが、400–500 nm帯の割合は20%と10%で異なる。

合成スペクトル 400–500 nm 500–600 nm 600–700 nm 合計
S1 40 60 100 200
S2 20 40 140 200

単位は各帯域についてµmol/(m²・s)。境界波長は重複計上しない。この表はLED製品の特性でも、どちらが優れるかを示す結果でもない。割合を示すときは、光子数による比率か放射エネルギーによる比率か、どの帯域を分母にしたかも書く。

光子1個のエネルギーは波長に依存するため、光子数の割合とWの割合は同じではない。また、スペクトルが変わると量子センサーの読みの誤差も変わりうる。Apogeeは、理想的な量子応答と実際の波長感度のずれ、校正光源と測定光源の違いによるスペクトル誤差を説明している。

光質を比較する実験では、可能なら分光測定を保存し、PPFD、光周期、葉温、CO₂、根圏条件を併記する。発光色の名称や調光器の設定だけで同じスペクトルと判断しない。

測定と電力量の比較を設計する

以下は本記事で提案する記録項目である。

記録 比較で防ぐ取り違え
センサー型式、帯域、校正日、光源 測定帯域・スペクトル誤差の違い
測定面、高さ、向き、格子、面積重み 別の位置や面を同じ値として扱うこと
時刻、タイムゾーン、記録間隔、欠測 積算・暗期の誤認
調光・点灯履歴、遮光、植物の状態 同じ設定でも入射条件が変わること
電力計の対象範囲と時間積算 PPFDから消費電力量を直接決めること

一定100 Wの照明を16時間動かせば照明の電力量は1.6 kWhとなる。しかしPPFD 200という値だけから100 Wとは決められない。調光時の電力、ドライバー、棚へ届く割合を別に確認する。冷房・除湿・送風の電力も含めて比較するなら、計量する設備の範囲をそろえる。

任意:ローカルで失敗条件も試す

計算コード、期待結果、README、manifestを配布する。Python 3.10以降の標準ライブラリだけで実行できる。

python3 experiment.py
python3 experiment.py --verify expected.json
python3 experiment.py --self-test

核となる算術は次のとおりである。

a = 200 * 16 * 3600 / 1_000_000
b = 400 * 8 * 3600 / 1_000_000
darkest = 100 * 16 * 3600 / 1_000_000
print(f"A={a:.2f}, B={b:.2f}, darkest={darkest:.2f}")

examples() のV分布の100を50へ変えると、最小値と平均の両方が変わる。Bの点灯終了を16時から15時へ変える場合は、次の暗期の開始も15時へ直す。点灯区間だけを短くして1時間の隙間を残すと、欠測として拒否される。消灯を表したい場合はゼロの区間を明示する。

テストは等DLI、区間分割、既知の区画DLI、面積重み、暗期、ゼロ照射時の未定義比、不正値、区間の隙間・重複、期待値の破損を検証する。すべてゼロの分布では最小/平均が0/0になるため、比率を0や1で埋めずJSONの null とする。数値が合うことと、栽培の生育応答が検証されたことは区別する。

光の条件を記録できたら、次は根圏の水・養分へ進む。EC・pH・溶存酸素・水温を分け、何を測り、何を操作するのかを整理する。

環境制御農業入門 — 植物・光・空気・水を一つのシステムとして読む

環境制御農業(Controlled Environment Agriculture、CEA)は、植物の周囲の環境を設備と計測で調整する農業である。温室も、人工照明を主な光源にする屋内栽培も含まれる。「植物工場」という建物だけを覚えるより、植物が何を受け取り、何を周囲へ返し、それをどの設備が変えるかを見ると理解しやすい。アリゾナ大学CEACは、CEAを園芸と工学が交わる分野として扱っている。

この記事では光合成を行う植物の栽培空間を対象にする。菌類や魚の生産へ同じ入出力モデルをそのまま適用しない。

温室と人工光型では、外とのつながりが違う

方式 光の入口 外部環境とのつながり まず分けて記録するもの
温室 太陽光、必要に応じた補光 日射、外気、換気の影響を受ける 外気と室内、自然光と補光
人工光型の屋内栽培 主に照明設備 照明時刻を決めやすいが、空調・給排水・人の出入りはある 照明と空調の電力、各棚の環境

これは方式を読むための比較であり、どちらが常に省エネルギーかを示す表ではない。Cornellの温室・生育室でも、温室と、周囲の環境から隔離して光や温度などを管理する生育室は区別されている。設備名だけで制御できる範囲を決めつけず、実際に備わる機能を確認する。

植物を中心に、設備との境界を描く

CEAでは光、温度、湿度、CO₂、水、養分などを一緒に考える。Missouri Extensionの解説が挙げる環境要素を、ここでは計測と設備の関係へ並べ替える。

対象 植物側で考えること 観測する量の例 操作する設備の例
光 葉へ届く光 PPFD、点灯時間 照明、遮光
空気 葉の周囲の温度と水蒸気、CO₂ 気温、相対湿度、CO₂濃度 空調、換気、除湿
根域 根に届く水と養分、酸素 給排水量、水温、EC、pH ポンプ、給液、排水
作物 生育が環境へどう応答したか 生体重、乾物重、葉数、品質 直接操作する値ではなく結果として評価

測定値、設定値、生育結果を分けることが重要になる。空調を25°Cに設定した記録は、葉の周囲が25°Cだった証拠ではない。室内の一点の湿度から、全棚の環境が同じだったとも言えない。

また、EC(電気伝導率)は液中のイオンに関係する測定量であり、個々の養分濃度そのものではない。ここで挙げた測定量は入口の一覧で、作物別の管理基準や校正手順を代替しない。

小さな例:栽培室を囲む線を一本引く

次はDuskcoilの説明用の架空例で、実施設の測定ではない。照明付きの栽培棚、水槽、空調がある一室を考え、「室全体」を境界とする。

境界をまたぐもの 入る側 出る側・蓄積する側 記録するときの注意
エネルギー 照明・空調・ポンプへの電力 外への熱、室内の蓄熱 kWと、期間で積算したkWhを分ける
水 補給水 排水、除湿で回収した水、室内や植物に残る水 回収水を再使用したら内部循環と外部補給を分ける
物質 苗、肥料、外気など 収穫物、廃棄物、排気など 「室全体」と「水槽だけ」の集計を混ぜない

室内で水槽から根へ水を送っても、それだけでは室の外から水が増えたことにはならない。境界を水槽に変えると、同じ流れが水槽の出口になる。この違いを説明できれば、水使用量や循環量を取り違えにくくなる。

照明の電力量を求める練習として、消費電力0.2 kWが16時間一定なら3.2 kWhである。これは照明だけの仮定値であり、空調を含む施設全体の消費量でも、植物へ届いた光量でもない。

光の強さと、一日の光量を分ける

PPFDは単位面積・単位時間あたりの光合成有効光量子束密度で、一般にμmol m⁻² s⁻¹で表す。DLIはそれを一日で積算した量で、mol m⁻² day⁻¹で表す。PurdueのDLI資料は、この瞬間値と一日の積算値の違いを解説している。

一定のPPFDを200 μmol m⁻² s⁻¹、点灯を16時間、それ以外の光をゼロと仮定すると、DLIは 200 × 16 × 3600 ÷ 1,000,000 = 11.52 mol m⁻² day⁻¹となる。前節の3.2 kWhとは測っている対象も単位も違う。照明の電力だけでは、このPPFDを決められない。

この計算は一定入力の確認例である。実際の時系列では時刻と測定間隔を残し、欠測を消灯とみなさない。同じ積算値でも光の与え方まで同じとは限らない。

計測から制御へ進む順番

まず温度計測の原理を確認し、測定位置・単位・時刻を記録する。次にサンプリングで、記録間隔が変動を捉えられるかを考える。設定値を変更する実験では、変更前後の条件と植物の応答を別々に残す。

次の学習対象は、気温と相対湿度から空気の水蒸気圧差を求めるVPDと、光の時系列を積算するDLIである。VPD・DLI実験記事では、合成CSVとPythonで計算・欠測を確かめられる。ブラウザでも条件を変更して実行できる。 このガイドの算数例を、実装済みの栽培シミュレーターとして扱わない。

理解を確かめるなら、「照明16時間」の記録だけで何が分からないかを書いてみる。光の強さ、測定位置、外から入る光が分からなければDLIは決まらない。同じように、設定温度だけでは植物が経験した環境は決まらない。ここを区別することが、CEAを機器の一覧から一つのシステムとして読む第一歩になる。

植物側の基礎へ進む

植物と環境の基礎で、光合成・呼吸・蒸散を炭素と水の収支へつなぎ、設備の設定値だけでは決まらない量を確かめる。

次に読む

温湿度・光を時系列の指標へ変換する。VPD・DLI実験 — 温湿度と光の時系列を検算する植物周辺の測定位置と応答遅れを確かめる。CEA気候制御 — 温湿度・センサー・応答遅れ・結合制御同じ分野を別の観点から読むCEAアクアポニックス — 魚・微生物・植物の水質境界