目次 — 知りたいところから読む

CEAのアクアポニックス — 魚・微生物・植物の水質境界

「植物が水をきれいにする」だけでは足りない

アクアポニックスは魚の排せつ物や餌由来の窒素を、微生物の変換と植物の吸収へつなぐ循環系である。Cornell Small Farmsは、細菌がアンモニアを硝酸へ変換し、植物が水と養分を取り込む関係を説明している。

ただし、魚の生存条件、硝化微生物の条件、植物の吸収条件は同じではない。魚槽のDOが十分でも生物ろ過の接触面で酸素が不足することがあり、植物側の硝酸が低くても魚槽のアンモニアが安全とは限らない。

三つの境界で測る

境界 主な観測 その値だけで決まらないこと
魚槽 水温、DO、pH、アンモニア、亜硝酸、液位 生物ろ過の変換速度
生物ろ過 流量、DO、pH、媒体状態、入口・出口の窒素 魚のストレスや植物吸収
植物側 硝酸、流量、根圏DO、pH、回収量 魚槽の安全性

水は循環していても、採取位置と採取時刻をそろえなければ値を比較できない。測定位置、ろ過の前後、給餌や補給との時間差をログへ残す。

窒素を一つの濃度にしない

合成の簡易収支で、魚側からアンモニア態窒素10 gが入り、生物ろ過で8 gが硝酸態へ変換され、植物が5 gを取り込んだとする。変換と吸収は同じ項ではない。残りの3 gは、他の蓄積・排出・未計測項と合わせて説明する必要がある。

運用時は、給餌量から負荷を直接決めたことにしない。まず給餌量、魚体量、排水・固形物除去、測定濃度を別々に記録する。例えば1日200 gの給餌を7日続けたなら、週の給餌量は 200\times7=1400 gである。そこから窒素負荷を推定する場合は、飼料の窒素割合、魚体への同化割合、固形物として除去した量を仮定として明記し、アンモニア濃度の安全判定とは分ける。

inputs_g = 10.0
converted_g = 8.0
plant_uptake_g = 5.0
unaccounted_g = inputs_g - converted_g
plant_side_residual_g = converted_g - plant_uptake_g
print(f"after biofilter: {unaccounted_g:.1f} g input-side residual")
print(f"after plants: {plant_side_residual_g:.1f} g nitrate-side residual")

出力は2.0 gと3.0 gである。これは濃度や魚の安全域を予測するモデルではなく、アンモニア・変換量・植物吸収量を同じ数字として扱わないための算術例である。

実務では、次の順に確認する。①給餌と魚体量から入力を記録する、②魚槽・ろ過前・ろ過後・植物側で同じ時刻に採水する、③固形物除去と補給水を別の流出・入力として記録する、④異常時は循環を隔離してから再測定する。この順序なら、濃度の単発値だけでろ過容量や魚の状態を断定せずに済む。

循環水と補給水を分ける

補給水は魚槽、生物ろ過、植物側のすべてへ影響しうる。水量を戻すだけでなく、水温、pH、アルカリ度、DO、窒素形態の変化を記録する。排水や固形物除去は、溶存窒素だけの収支に入れず、別の流出として扱う。

Cornellのアクアポニックス資料は、魚槽、固形物を集める工程、植物側、戻りの循環構成を説明している。魚・微生物・植物を一つの制御ループへまとめる前に、各境界の観測と異常時の隔離を定義する。

範囲

本記事は魚・硝化微生物・植物の水質境界と合成窒素収支を扱った。魚種別の許容値、飼育密度、ろ過容量、病原体、飼料設計、食品出荷判定は扱わない。次は固形物捕捉と窒素・リンの負荷を分けて整理する。

次に読む

区画ごとの給液・排液経路を確認する。CEAロット・区画の追跡と隔離運用根圏の酸素・水・溶質を確認する。CEA計測・画像推定 — センサー配置と投影葉面積シリーズの次の内容へ進むCEAアクアポニックス — 負荷・設備容量・隔離と復旧