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供給が不足すると、運転を続けている同期系統の周波数は下がる方向へ動く。ただし、電圧が失われた完全な停電を「周波数がゆっくり下がる状態」と同じには扱えない。ここで計算するのは、通電が続く一つの系統を一つの周波数で代表させた教育用モデルである。

慣性と調整を別々に置く

慣性は変化の速さに関係し、一次調整は不足する電力を補う応答に関係する。慣性だけでは不足が解消するわけではない。背景は系統慣性の基礎と、2020年のInertia and the Power Gridの概要を参照できる。本記事の数値は独自の仮定による計算で、実系統の事故記録ではない。

モデルの式と単位

基準周波数f₀=50 Hz、周波数偏差をx=(f−f₀)/f₀とする。発電増分p、需要増または供給減の大きさdは、同じ電力ベースで割ったpu値である。

2H\frac{dx}{dt}=p-d-Dx,\qquad T_g\frac{dp}{dt}=-p-\frac{x}{R},\qquad f=f_0(1+x)

Hは慣性定数[s]、Dは周波数依存の負荷応答、Rはdroop、Tgは調整応答の時定数[s]。ここではD=1、R=0.05、Tg=0.5 sとする。R=0.05は、定常的に周波数偏差−0.05 puに対し発電増分+1 puを指令する比例関係を意味する。ただし本モデルには発電余力・飽和・不感帯を入れていない。

一次調整なしのケースでは、右の式の−x/Rを0に置き換える。Dは残すので、「すべての応答がない系統」ではない。初期値はx=0、p=0、2 sでd=0.05へ変える。

実行手順

実行コードを保存し、python3 engineering_labs.pyを実行する。Python 3.12.3、NumPy 1.26.4、Matplotlib 3.6.3で確認した。4次Runge–Kutta法で0〜30 sを刻み0.01 sで解く。刻みを0.005 sへ半減した結果との最大差は約1.8×10⁻⁹ Hzだった。これは数値刻みの確認であり、モデルが実物に正しいという検証ではない。

周波数CSVは時刻と4ケースの周波数を含む。集計JSONには最低値、終了時の値、初期変化率を載せた。

結果の読み方

H [s] 一次調整 初期RoCoF [Hz/s] 0〜30 sの最低周波数 [Hz] 30 sの周波数 [Hz]
2 なし −0.625 47.502 47.502
5 なし −0.250 47.652 47.652
2 あり −0.625 49.786 49.881
5 あり −0.250 49.846 49.881
図1 · ボタンで表示を切り替え
5%の供給不足に対する合成系統周波数応答。横軸s、縦軸Hz。

事故直後はまだpとxが0なので、初期RoCoFは−f₀d/(2H)となる。Hを大きくすると初期の低下が遅くなる。一次調整ありでは落ち込みから回復するが、50 Hzには戻り切らない。

定常偏差を式でも確かめる

一次調整ありの定常値は、微分を0にして求められる。

x_{\infty}=-\frac{d}{D+1/R}=-\frac{0.05}{21},\qquad f_{\infty}\simeq49.88095\ \mathrm{Hz}

Hはこの定常式に現れない。慣性を増やす役割と、周波数を基準へ戻す二次調整の役割を分ける必要がある。一次調整なしでは本モデルの定常値は47.5 Hzだが、表のH=5のケースは30 s時点でまだ近づいている途中である。

どこまで言えるか

このモデルには電圧、送電網の場所ごとの差、発電機の脱調、保護装置、負荷遮断、蓄電池の制約を入れていない。特に47 Hz台までの曲線は線形モデルの形式的な出力であり、実系統が保護動作なしでそこまで運転すると予測するものではない。

最初の追加実験は、Hを固定してRまたはTgを一つだけ変えること。次に発電増分へ上限を入れると、「応答を速くする」と「供給できる余力を持つ」の違いを確認できる。電力の学習ガイドから送配電・蓄電の前提にも戻れる。

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