目次 — 知りたいところから読む
減速機は、速く回るモータを遅く回る関節へつなぎ、速度とトルクの釣り合いを変える。ロボット関節の固定比減速を対象に、遊星歯車、波動歯車、サイクロイド系の違いを整理する。方式名だけで精度や寿命の優劣は決められない。
減速比から速度とトルクを計算する
減速比Nを入力速度/出力速度の大きさ、効率をηとする。モータが負荷を駆動する定常状態では、概略は次のとおり。
最後の式は、理想的な剛体伝達で負荷慣性をモータ軸へ換算したもの。減速機自身の慣性、弾性、摩擦は別に加わる。逆駆動の効率を同じηと決めつけてもいけない。
仮に入力3,000 rpm・0.20 N m、N=50、η=0.8なら、出力60 rpm・約8 N mとなる。入力の機械動力は約62.8 W、出力は約50.3 Wである。トルクが50倍近くになっても、エネルギーが増えるわけではない。この例は選定済み製品の定格ではなく算術例である。
遊星歯車:中心・周囲・外周の関係
中央の太陽歯車、周囲の遊星歯車、内歯車、遊星を保持するキャリアで構成する。何を固定し、どこを入力・出力にするかで減速比と方向が変わる。内歯車固定、太陽入力、キャリア出力という単純な一段構成なら、減速比は1+内歯車歯数/太陽歯車歯数となる。
例として内歯車60、太陽20、遊星20歯なら減速比は4。この条件を省いて「遊星の減速比はこの式」と一般化しない。高い減速比には多段化する設計もあり、段数が増えると効率・寸法・剛性の条件も変わる。HDSの製品一覧には精密遊星と波動歯車の両方があり、同じ会社でも方式が一つとは限らない。
波動歯車:弾性変形と歯数差
楕円形のwave generator、柔軟なflexspline、剛体のcircular splineを組み合わせ、かみ合い位置を移動させる。HDSの動作原理は三要素と歯数差を説明している。
circular splineを固定し、wave generatorを入力、flexsplineを出力にする例で、flexsplineが200歯、circular splineが202歯なら、入力1回転で出力は逆方向へ2/200回転進む。減速比の大きさは100である。薄肉部の弾性を利用するため、組付け・潤滑・負荷条件も合わせて確認する必要がある。
サイクロイド系:偏心運動を回転へ取り出す
偏心で動く円板状の歯車と周囲のピン等を組み合わせ、差のある歯数・ピン数から減速した回転を得る。出力へ偏心運動をそのまま渡さず、回転成分を取り出す構造が要る。すべての製品が同じ一段構成ではない。
Nabtesco RVの原理は、平歯車による第一段と偏心運動を使う第二段を説明している。RVという商品群とサイクロイド系全体を同義には扱わない。方式の理解と、個別型式の定格の確認を分ける。
同じ軸で比較する
| 比較軸 | 確認する内容 | 見落とすと起きること |
|---|---|---|
| 速度・トルク | 定格、加減速ピーク、非常時、デューティ | 短時間ピークを連続使用の値にする |
| バックラッシ・ロストモーション | 測定荷重と定義 | 無負荷のすきまと荷重反転時の動きを混同する |
| ねじり剛性 | 荷重と変形の関係 | バックラッシが小さくてもたわむ |
| 支持と取付け | 出力軸受、モーメント、同軸度 | 減速歯車だけで外部荷重を支えようとする |
| 摩擦・逆駆動 | 温度、速度、効率、起動トルク | 接触力や手動操作性を予測し損なう |
| 寿命・保守 | 荷重履歴、潤滑、密封、使用環境 | 同じ減速比を同じ寿命だと解釈する |
精密な位置決め、接触を伴う作業、高速搬送では優先する軸が違う。まず負荷の時間履歴と取付け条件を決め、その条件で候補型式の資料を比較する。方式ごとの一律ランキングは作らない。
制御と企業研究へつなぐ
出力側の弾性や摩擦があると、モータ側エンコーダだけでは負荷の状態を完全には表せない。減速比を増やせば位置分解能だけでなく速度範囲、反射慣性、逆駆動性も変わる。モータのFOCで作るトルクとつなげて考える。
次はロボット用減速機メーカーの企業研究で、機構だけでなく、部品・軸受付きユニット・アクチュエータという供給範囲を比較する。
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