「スーパーゼネコン」と呼ばれる大手総合建設会社は、道路・ダム・トンネルの土木インフラから超高層ビル・工場・データセンターまで、社会基盤そのものを造り上げる。深刻な人手不足と技能労働者の高齢化を背景に、業界最大手の鹿島建設・大成建設・清水建設は自動化・ロボット化技術の開発でしのぎを削っており、企業規模と建設ロボット技術の両面で3社の差が浮かび上がる。

鹿島建設ロゴ鹿島建設
清水建設ロゴ清水建設

画像: 鹿島建設ロゴ(CC BY 2.5) / 清水建設ロゴ(パブリックドメイン)、Wikimedia Commons。大成建設については著作権基準を満たす形でCommonsに登録されたロゴ画像が見つからなかったため、本文中での言及にとどめる。

企業の歴史: 幕末・明治の大工から日本最古級のゼネコンへ

3社とも起源は江戸〜明治期にさかのぼり、いずれも「大工の棟梁」あるいは「個人商店」から出発して株式会社化していったという共通の経路をたどっている。

清水建設は3社の中で最も古く、1804年(文化元年)、越中(現・富山県)出身の大工・初代清水喜助が江戸・神田鍛冶町で開業したのが起点である。1838年の江戸城西の丸再建工事への参加、1858年の横浜開港に伴う外国奉行所建設の請負などを経て、1868年には外国人向け旅館「築地ホテル館」を完成させ、西洋建築の技術を早くから吸収した。

鹿島建設の起点は1840年(天保11年)、創業者・鹿島岩吉が江戸・京橋に大工店「大岩組」を構えたことにさかのぼる。1880年に鹿島組として東京・京橋木挽町に本店を構え、明治維新後の鉄道建設ブームに参入して延べ2,000km以上の線路敷設に関与するなど、インフラ建設で地歩を固めた。1930年に株式会社鹿島組が設立され、1947年に現在の鹿島建設株式会社に改称している。

大成建設は3社の中で最も新しく、1873年(明治6年)に大倉喜八郎が大倉組商会を創立したのが起点である。1887年、大倉喜八郎は渋沢栄一・藤田伝三郎とともに有限責任日本土木会社を設立し、これが日本初の会社組織による土木建築業とされる。大倉土木組・株式会社大倉組土木部などへの変遷を経て、1946年に大成建設株式会社へ改称した。社名の「大成」は大倉喜八郎の戒名に由来し、「建設」は英語のconstructionを訳した新語として、同社が初めて社名に採用したものである。

3社とも祖業は木造建築の大工技術にあるが、清水建設は個人創業からの直線的な発展、鹿島建設は鉄道インフラ建設への早期参入、大成建設は渋沢栄一らとの共同出資による近代的会社組織の確立という、それぞれ異なる転換点を経て現在の3社体制にたどり着いている。

企業規模の比較: 過去5期の推移

単年度の数値だけでなく、直近5期(2022年3月期〜2026年3月期、3社とも決算期は3月で統一)の推移で見ると、3社の成長パターンの違いがより鮮明になる。

決算期 鹿島建設 売上高 鹿島建設 営業利益 大成建設 売上高 大成建設 営業利益 清水建設 売上高 清水建設 営業利益
2022年3月期 2兆797億円 1,233億円 1兆5,432億円 960億円 1兆4,829億円 451億円
2023年3月期 2兆3,916億円 1,235億円 1兆6,427億円 547億円 1兆9,338億円 546億円
2024年3月期 2兆6,652億円 1,362億円 1兆7,650億円 265億円 2兆55億円 ▲247億円(上場来初の営業赤字)
2025年3月期 2兆9,118億円 1,519億円 2兆1,542億円 1,202億円 1兆9,443億円 710億円(黒字転換)
2026年3月期 3兆672億円(過去最高) 2,408億円(過去最高) 2兆890億円 1,880億円(過去最高) 2兆578億円 1,187億円
指標 鹿島建設 大成建設 清水建設
連結従業員数(2026年3月期) 11,437人 10,984人 11,434人
特記事項 5期連続増収増益、建設業として初の売上高3兆円超 2024年3月期を底に急回復、各段階利益で過去最高 2024年3月期に上場来初の営業赤字を計上後、2期連続増益

鹿島建設は5期連続で増収増益を続け、2022年3月期から2026年3月期にかけて売上高は約1.5倍、営業利益は約2倍に伸びた。大成建設は2024年3月期に営業利益が264億円まで落ち込んだものの、翌2025年3月期に4.5倍の1,202億円へ急回復し、2026年3月期には過去最高の1,880億円を記録している。清水建設は3社の中で唯一、2024年3月期に247億円の営業赤字(1961年の上場以来初)を計上するという最も大きな谷を経験しており、その後2025年3月期に黒字転換、2026年3月期には純利益が前期比67%増と急回復した。3社とも2024年3月期前後を底とするV字回復を遂げている点は共通しているが、谷の深さと回復の形は各社で異なり、特に清水建設の赤字転落と大成建設の営業利益8割減という落ち込みは、資材価格高騰や労務費上昇を受注価格に転嫁しきれなかった時期があったことを示している。

主力事業の比較: 海外事業と新領域事業

国内建設市場が人口減少で頭打ちにある中、3社はそれぞれ異なる領域に成長の活路を求めている。

項目 鹿島建設 大成建設 清水建設
海外事業の位置づけ 海外関係会社の売上高1兆1,143億円・構成比38.3%で、建築事業を上回り全セグメント最大に成長 2024年4月に国際支店を再編し「国際事業本部」を新設、現地化を推進 1974年にシンガポール拠点を開設して以来、約60カ国で施工実績
海外の代表プロジェクト 米国・ロサンゼルスを北米の主力拠点とし、耐震・免震技術が評価される高層ビル建設。中国では医薬品・食品工場(明治乳業天津工場等) ベトナム「TAISEI SQUARE HANOI」、カタール・ハマド国際空港旅客ターミナル、フィリピン南北通勤鉄道事業 東南アジアを中心に生産施設・超高層ビル・病院・地下鉄などを展開
国内の新領域 データセンター(米国含む)受注が急増、都市再開発・不動産開発事業の資産積み上げと売却 半導体工場建設(TSMC熊本工場等)を通じた製造業向け建設需要の取り込み 1987年設置の宇宙開発室を2018年に事業部門化。太陽工業・東京理科大学と月面居住施設を共同研究

3社とも「国内の建築・土木」という祖業の外側に成長領域を求めているが、その方向性は異なる。鹿島建設は海外関係会社の売上高だけで1兆円を超え、もはや売上構成比で見れば「国内ゼネコン」と言い切れない構造になっている。大成建設は半導体工場やデータセンターといった国内の高付加価値建築に加え、2024年の組織再編で海外事業のてこ入れを図る。清水建設は海外展開でも約60カ国の実績を持つ一方、他の2社にはない特異な事業として、1987年から続く宇宙開発研究を掲げ、月面居住施設という長期的なフロンティア領域に投資を続けている。

技術戦略・強みの違い: 建設ロボット・自動施工技術

大手ゼネコン各社は、深刻化する技能労働者不足への対応として、それぞれ異なる切り口で自動化技術に取り組んでいる。

鹿島建設は土木分野の自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を展開している。ダンプトラックによる土砂運搬・荷下ろし、ブルドーザによる敷き均し・整形、振動ローラによる締め固めといった一連の土工作業を、GPS・ジャイロ・レーザースキャナと制御用PCを搭載した建設機械同士が連携し、無人・自動で行うシステムである。人間はオペレーターとして作業計画を送信するだけでよく、複数台の建機を同時に無人運転させることができる。

大成建設は千葉工業大学と共同で、鉄筋工事を自動化するロボット「T-iROBO Revar(ティーアイロボ・リバー)」を開発した。鉄筋工事のおよそ2割を占めるとされる鉄筋の結束作業を自動化するもので、このほかにもコンクリート床仕上げロボット「T-iROBO Slab Finisher」、現場溶接自動化工法「T-iROBO Welding」、自律清掃ロボット「T-iROBO Cleaner」など、T-iROBOシリーズとして建築現場の各工程を個別にロボット化する開発を進めている。

清水建設は2018年、自律型ロボットと統合管理システムを組み合わせた次世代生産システム「Shimz Smart Site」を発表した。タブレット端末からの指示で稼働する3種類のロボット — 資材の水平搬送を担う「Robo-Carrier」、鉄骨柱の溶接を行う「Robo-Welder」、天井材・床材の取り付けなど複数の作業をこなす多能工ロボット「Robo-Buddy」 — が中核をなし、建築現場の生産システムそのものをロボットとBIM(Building Information Modeling)で再設計する構想である。

同じ「建設ロボット」という課題に対しても、鹿島は土木分野の自動施工、大成は工程ごとの個別ロボット開発、清水は建築現場全体の生産システム再構築、というように各社のアプローチには明確な違いがあり、それぞれの得意領域(鹿島は土木、大成・清水は建築)を反映した戦略の差が見て取れる。

開発・製造拠点(本社・国内主要支店)

ゼネコンは製造業のような「工場」を持たないため、ここでは各社の本社機能と全国の主要支店網を地図に示す。地方ごとの支店配置はほぼ共通しており、北海道から九州まで全国をカバーする体制を敷いている点は3社共通である。

出典: 鹿島建設「国内主要拠点」、大成建設「事業所」、清水建設「事業所一覧」の各公式ページに掲載の支店名・住所(いずれも一次情報)。3社とも全国に多数の支店・営業所を持つが、ここでは本社・技術研究所と地方ブロックの主要支店(各社8拠点)に絞って掲載した。座標はOpenStreetMap Nominatimによる町丁目単位のジオコーディング。

事業戦略・今後の展望: データセンター・半導体工場という新たな主戦場

2026年3月期の大手ゼネコン決算に共通するのは、資材価格・労務費の上昇分を受注価格に転嫁しきれる案件だけを選ぶ「選別受注」が定着し、採算性が大きく改善したことである。中でも需要を牽引しているのが、クラウド事業者・通信事業者向けの大型データセンターと、半導体工場関連の建設案件で、1件あたり数百億〜1,000億円規模の案件も珍しくない。大成建設はTSMC熊本工場関連の建設を受注し、鹿島建設は米国でのデータセンター建設案件が急増するなど、両分野は3社共通の主戦場になりつつある。

鹿島建設は中期経営計画(2024〜2026年度)「中核をさらに強化し、未来を開拓する」のもとで、2026年度に親会社株主帰属当期純利益1,300億円以上(2030年度は1,500億円以上)、ROE10%超の継続を目標に掲げる。3年間で成長投資に1.2兆円程度を配分する計画で、前述の海外事業(売上構成比38.3%)と国内外の不動産開発事業の資産積み上げ・売却による利益実現を成長の柱に据える。2026年3月期の実績(営業利益2,408億円、5期連続増収増益)は、この中計の目標達成に向けて先行するペースで進捗している。

大成建設は「TAISEI VISION 2030」達成計画と中期経営計画(2024〜2026年度)のもとで、2026年度にグループ売上高1兆9,500億円程度・グループ営業利益1,200億円・純利益800億円・ROE8.5%程度という目標を掲げていたが、2026年3月期の実績(売上高2兆890億円、営業利益1,879億円)はこの計画目標を売上高・利益ともに大きく上回っている。3年間で3,500億円の投資枠(うち技術開発・DX投資1,250億円)を設定し、国内建築事業の収益力立て直しを最優先課題としていたが、想定より早いペースで収益改善が進んだ形である。

清水建設は中期経営計画〈2024-2026〉のもとで、計画期間をこれまでの5年から3年に短縮し、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」を基本方針に据える。建設事業(建築・土木)については「高収益な事業体質への転換」と「ものづくりの魅力を追求できる生産体制の再構築」を掲げ、中期DX戦略〈2024-2026〉では「組織横断DX推進体制の構築」「DX人財の育成」を重点施策とする。2024年3月期の上場来初の営業赤字という谷を経験した清水建設にとって、この中計は文字通り経営基盤の立て直しを賭けた3年間であり、2026年3月期の増収増益・純利益67%増という結果は、その一定の成果を示している。

3社に共通するのは、データセンター・半導体工場という新しい高採算領域への選別受注シフトと、DX・自動化投資による生産性向上を両輪とする経営である。国内建設市場そのものが人口減少で緩やかに縮小する中、海外事業(鹿島)、国際事業本部の再編(大成)、宇宙開発という長期フロンティア(清水)など、祖業の外側に成長の芽を求める動きも各社で並行して進んでいる。

参考リンク

#ゼネコン #鹿島建設 #大成建設 #清水建設