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前提と読み方

前提知識 電気回路の電圧・電流・抵抗・インダクタ・コンデンサ。

入門 · 原理・構成・判断のための解説です。

0. この記事で分かること

  • スイッチング周期のデューティ比が、降圧・昇圧電圧を決める理由。
  • 非絶縁型Buck/Boostと、トランスを使うFlyback/LLC/DABの違い。
  • インダクタ電流、リップル、効率、絶縁、安全を含む設計手順。

1. DC-DCコンバータとは何か

DC-DCコンバータは、直流を一度スイッチで刻み、インダクタやトランスへエネルギーを蓄えて、別の直流電圧・電流へ変換する回路である。抵抗で落とす方式と異なり、理想的には電力をほぼ保存したまま電圧と電流を交換する。ただし実機の効率は導通損失、スイッチング損失、磁性部品、制御回路、待機電力で決まるため、入力電力と出力電力を同じとみなして定格を決めてはいけない。

2. Buck:降圧

Buckではスイッチがオンの間に入力からインダクタへエネルギーを送り、オフの間はフリーホイール経路で電流を流す。連続電流モードの理想平均は

V_o=D V_{in},\qquad \Delta I_L=\frac{(V_{in}-V_o)D}{L f_s}

である。Dはデューティ比、Lはインダクタ、f_sは周波数。これは定常状態・理想部品・CCM・小さい出力リップルを仮定した式で、スイッチ電圧降下やインダクタ直流抵抗は含まない。負荷が軽くなると不連続電流モードへ移り、同じDでも電圧関係が変わる。TIの設計資料もCCMとDCMを分けて解析している。

計算例:12 Vから5 V・2 Aを作る

理想Buckの連続電流モードを仮定し、L=10\,\mu\mathrm{H}、f_s=500\,\mathrm{kHz} とする。D=5/12\simeq0.417、電流リップルは \Delta I_L\simeq0.583\,\mathrm{A} となる。出力2 Aに対してインダクタ電流は約1.71〜2.29 Aを往復する。したがって、インダクタの飽和電流やスイッチの電流制限は平均2 Aだけでは選べない。

これは損失を省いた説明用計算であり、部品推奨値ではない。最悪入力電圧、周波数公差、負荷過渡、温度を追加して検証する。式と部品定格の関係は TI SLVA477B の2〜3節を参照する。

3. Boost:昇圧と制御の難しさ

Boostはオン時にインダクタへ蓄え、オフ時に入力とインダクタを直列にして出力へ送る。

V_o=\frac{V_{in}}{1-D},\qquad I_{in}\simeq\frac{V_o I_o}{V_{in}\eta}

Dを大きくすると理想電圧は急増するが、スイッチ耐圧、インダクタ飽和、ダイオード逆回復、制御帯域が先に限界になる。Boostは右半平面零点を持つ動作条件があり、単純な高ゲイン補償では不安定化する。

4. 基本構成

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DC-DC変換の電力経路と制御ループ上段の実線は電源から負荷への電力、下段の破線は観測とスイッチ指令。制御器は主電力の経路に入らない。 電力の経路 直流電源 スイッチ回路L・C・必要な絶縁 直流負荷 PWM制御器 ゲート指令 電圧・電流の観測 目標値

実線は電力、破線は観測とゲート指令。PWM制御器は負荷へ電力を供給する主経路には入らない。

5. 絶縁型:Flyback・LLC・DAB

Flybackはトランスの磁化インダクタンスへ蓄えたエネルギーを、スイッチオフ時に二次側へ渡す。小電力のACアダプタや補助電源に向くが、漏れインダクタンスのスパイクとスイッチング周波数のピーク電流が課題になる。Forwardはオン期間に二次へ直接伝えるため、リセット巻線やクランプが必要になる。

LLC共振コンバータは漏れインダクタンス・磁化インダクタンス・コンデンサの共振周波数を使い、スイッチ電圧または電流がゼロに近いタイミングで切り替える(ソフトスイッチング)。高効率・高周波に向くが、入力・負荷範囲を外れると制御と磁気設計が難しい。DAB(Dual Active Bridge)は一次・二次のフルブリッジ位相差で双方向に電力を送れ、電池充電器やDC配電で使われる。

6. リップル・損失・熱

BuckをCCMで動かし、インダクタ電流を対称な三角波とみなす場合に、出力コンデンサの容量成分だけの電圧リップルを近似すると

\Delta V_C\simeq\frac{\Delta I_L}{8 f_s C},\qquad P_{loss}=P_{cond}+P_{sw}+P_{mag}+P_{cap}

このリップル式はBoostやDCMへそのまま適用せず、波形から再計算する。

となる。容量 C を増やすと容量成分のリップルは小さくなるが、実装面積やコストが増えやすい。ESRによるリップルと発熱は、容量そのものではなくESRとリップル電流で決まる。一方、f_s を上げると同じL・Cでリップルを減らせるが、スイッチング損失やEMI対策との折り合いが必要になる。インダクタの銅損I^2Rとコア損、トランスの漏れ、ダイオードの逆回復を同じ負荷プロファイルで測る必要がある。

7. トポロジー比較

方式 電圧関係・絶縁 強み 注意点
Buck 降圧・非絶縁 高効率、制御が容易 入力より高い出力不可
Boost 昇圧・非絶縁 PV・燃料電池の昇圧 右半平面零点、スイッチ耐圧
Buck-Boost 昇降圧・非絶縁 入力範囲が広い 極性・電流リップル
Flyback 絶縁・磁化エネルギー 小電力、部品が少ない スパイク、ピーク電流
LLC 絶縁・共振 高効率、高周波 広い入力範囲の制御
DAB 絶縁・双方向 EV充電、DC配電 軽負荷循環電流

8. 苦手な条件と安全

入力電圧の急変、短絡、負荷の突入、部品の飽和は制御器を外れた状態にする。サイクルごとの電流制限、過電圧・低電圧ロックアウト、ソフトスタート、ヒューズ、絶縁監視、温度保護を重ねる。絶縁型では沿面距離・空間距離、トランスの耐圧、一次二次の故障時エネルギーを規格に合わせる。

9. 実用上の選び方

  • 電池から12/48 Vを作る:入力の最低電圧が出力より高ければBuckまたは多相Buck。電池電圧が出力をまたぐならBuck-Boost、常に低ければBoostを検討する。入力範囲、連続電流、過渡応答、インダクタ温度を確認する。
  • PV・燃料電池からDCリンクへ:BoostまたはインターリーブBoost。MPPT、入力電流リップル、最大デューティを評価する。
  • ACアダプタ:Flyback(小電力)またはLLC(高電力)。絶縁、待機電力、EMI、規格を優先する。
  • EV急速充電・DC配電:双方向DABや絶縁型多相構成。回生、故障時の電力方向、冷却を含めて選ぶ。

10. まとめ(3行で復習)

DC-DCコンバータは、スイッチング周期のエネルギーをL・トランス・Cへ移して電圧を変える。
Buck/Boostの式は連続電流モードの入口であり、実機ではリップル、モード遷移、補償、磁気損失が効く。
絶縁・短絡・熱・EMIを含む保護設計が、理想効率を製品の信頼性へ変える。

理解を確かめる
降圧回路で入力より高い電圧を作れる?

理想Buckの連続電流モードでは出力は入力にデューティ比を掛けた値で、入力を超えない。昇圧には別のトポロジーを使う。

参考リンク

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